2016年5月 徳重神社(日置市伊集院町)

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鹿児島の三大行事のひとつである妙円寺詣りで有名な徳重神社。江戸時代には、数多くの偉人と呼ばれる人々が参拝に訪れた妙円寺という寺院でもあった。

慶応元(1865)年には、英国に派遣された留学生達も、現在のいちき串木野市羽島から船で旅立つ前に参拝に訪れている。

留学生らに藩から辞令が下ったのは、この年の1月16日のこと。そして留学生らが鹿児島城下を出発したのは1月18日であり、少々慌ただしく陸路にて英国への旅の一歩を踏み出した。その行程は、当時の薩摩藩における主要街道であった出水筋こと薩摩街道を、水上坂や横井を通りながら伊集院を目指した。途中少しばかり通常のルートから外れ、留学生の中に居た町田兄弟の領地でもある石谷を通過しての伊集院入りとなった。

留学生らは、伊集院で島津義弘の菩提寺である妙円寺を参拝する。妙円寺は曹洞宗の寺院で、嘉慶元(1387)年に島津氏の菩提寺である福昌寺の開山にも関わった石屋真梁により創建された。

慶長9(1604)年に島津義弘が菩提寺と定めてからは藩によって保護され、義弘亡き後は関ヶ原の功績を偲び、鹿児島城下などから歩行参拝することが恒例となった。

西郷隆盛や大久保利通らも鹿児島から参拝に訪れた記録があることから、留学生らも一度は訪れたい場所であっただろう。未知なる世界への旅立ちの前に、気持ちと決意を改めて整理するには最高の寺院であったに違いない。