2014年2月 寺山公園から見た桜島と錦江湾(鹿児島市吉野町)

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昨年(2013年)、桜島と錦江湾が日本ジオパークに加盟された。活火山と人々が共生する暮らしやそれらを伝える活動が評価されての加盟だった。

ジオパークを楽しむための名所や景勝地をジオサイトというが、寺山公園はジオサイトのひとつでもある。標高約420メートルからの桜島と錦江湾は、まるで空中から眺めているような開放感がある。寺山公園から真下に見える錦江湾は、今から約3万年前に大噴火した姶良カルデラで、噴出した火砕流は南九州一帯を覆い尽くして平たい台地を形成した。シラス台地の誕生である。

寺山公園は、その姶良カルデラの外輪山の一部ともいえ、急峻な崖がこれを物語る。また錦江湾は桜島に象徴されるように、現在でも活発な火山活動が継続していて、公園周辺は現在も少しずつ隆起している。

江戸時代の中頃となる安永8年の桜島大噴火に際しては、桜島の人々の一部がこの寺山に移住し、黒神地区にある原五社神社を勧請している。故郷を常に望むことのできる場所での生活は、移住による開墾という過酷な労働の中の癒しになったであろう。

寺山には西郷隆盛が西南戦争勃発前に開墾していた農場もあった。この風景を西郷も眺めていたのかと思うとさらに美しく思えたりするから不思議だ。

寺山公園から望む桜島は、活動の活発な南岳よりも扇状地の発達した北岳が印象的に映る。その延長になめらかに広がるような錦江湾に、時々小さな船が行き交う姿を見つけると、身近な錦江湾でありながら、どこかよその場所の風景のような気さえしてくる。