2018年4月 雄川の滝(肝属郡南大隅町根占川北)

201804

皆さん、大河ドラマ「西郷どん」はご覧になっているだろうか。

ドラマ展開の面白さはもちろんだが、素晴らしいテーマ曲とともに流れるオープニングの映像は、鹿児島の自然が印象深く映し出されている。

登場する鹿児島の風景はどこも美しく雄大だが、放映開始から撮影地の自治体に問い合わせが増えている場所のひとつが、南大隅町の雄川の滝である。

ドローンによる映像は、エメラルドグリーンに輝く滝壺と横に広がる崖の迫力ある岩肌が見事である。

滝の大きさは、高さ46メートル、幅60メートル。約11万年前に大噴火した阿多カルデラからの火砕流堆積物によって形成されている。一気にたまった火砕流堆積物が約11万年の時をかけて流水などによって浸食された地形を私たちは目にしているのだ。

滝を流れる雄川は流長が約24キロメートルあり、源流に花崗岩からなる稲尾岳などの山地がある。

その雄川の河口付近には、明治6(1873)年以降、西郷隆盛が明治政府の職を辞して鹿児島に戻って来た際に訪れたとされる屋敷が残されている。現在その屋敷は「西郷南洲翁宿泊の家」として保存され、内部は当時の面影を色濃く残してくれている。

西郷来訪の時期や回数については正確な記録に乏しいが、明治10(1877)年1月、西南戦争のきっかけとなる私学校生徒による火薬庫襲撃の報を聞いたのは当地とされている。

その際は狩猟を目的に根占を訪れていたようである。西郷の狩猟はウサギ狩りが主であり、狩猟範囲は宿泊地周辺に限らず広範囲であったと伝わる。雄川の滝下流の北之口集落には、狩りの途中で腰掛けた石があったとされ、そこに休んだ際には地域の子どもたちにさまざまな話をしたとの逸話が残されている。

ちなみに雄川の滝は、江戸後期に編さんされた「三國名勝図会」にも名所として記載されている。西郷が滝を見学した記録はないが、当時すでに名所として認識されていただけに、来訪したのではと考えるのも滝の見事さのようにロマンがあるといえそうだ。