2022年2月 花瀬自然公園(肝属郡錦江町田代川原)

202202

大河ドラマ「西郷どん」のオープニング映像にも登場した雄川の滝。

その滝の上流に位置する花瀬自然公園は、溶結凝灰岩の上面が水流によって浸食されて形成された石畳が広がる独特の景観を有している。

この溶結凝灰岩は、約11万年前に破局的な噴火によって発生した火砕流が堆積したもので、その一連の噴火によって阿多カルデラが誕生したとされている。雄川の滝も同じく阿多カルデラ起源の火砕流堆積物である。

花瀬大橋周辺が特に公園としても有名で、鹿児島弁で「おでばい」といわれる弁当箱を持参して賑やかに過ごすいわゆるピクニックが江戸期から行われている場所でもあった。そのひとつとして、嘉永6(1853)年に島津斉彬がこの地に訪問したことを示す記念碑が河川敷に建立されている。またその際に茶を点てる湯などを沸かしたとされる釜が残る「花瀬お茶亭跡」も川を見下ろす道路沿いにある。おそらく、島津斉彬もこの風景に魅了されたことであろう。

石畳の河川敷は約2キロに渡って楽しめ、雨量の少ない時期には河床を歩いて散策できる場所もある。

こうした川床には、水中に花を咲かせるコケ類カワゴケソウ科の「カワゴロモ」が確認されている(県の天然記念物)。

カワゴロモは急流の岩盤や大きな石に固着して生育するが、葉は鉢状で茎とともに退化し、さらに根が葉状となって固着機能が発達して光合成を行うとされている。極めて水質が良い場所が生育環境とされるので、雄川の水はそれだけ良質ということになる。

公園にはキャンプ場や休憩所も設置されており、幅広い層の方々に親しんでもらえる環境が整っている。

大橋の上流にも渓流は連続しており、河川敷の美しい溶結凝灰岩が人々の目を楽しませる。

公園から約8キロ上流は奥花瀬と呼ばれ、初春から秋まではニジマス釣りを楽しむことができ、河川敷だけでなく、雄川沿いには照葉樹林も広がることから、森林浴も楽しめる渓流である。