2014年11月 塩浸温泉(霧島市牧園町)

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木々の間から細くみえる空が印象的な、谷間の天降川沿いにある塩浸温泉は、公衆浴場はひとつしかないものの全国に知られた温泉でもある。なぜならここが日本最初の新婚旅行で坂本龍馬と妻お龍が訪れた場所であるからだ。

慶応2(1866)年1月に京都において締結された薩長同盟。その仲介者として大きく関わった坂本龍馬は、締結後に伏見の寺田屋において幕府の役人等に襲撃され、手などに深手を負う。京や大坂にいては危ういことと、手の傷を癒すため、西郷隆盛や小松帯刀らとともに鹿児島に向かう。その際、世話をし続けていたお龍を妻にしてのことであった。

切り傷に適応するといわれる塩浸温泉を紹介してもらい、療養と休養の両方を兼ねて、この地を訪れることになった龍馬は、温泉入浴はもちろんのこと、ピストルで鳥を撃ってみたり、魚釣りをしてみたりと、京や大坂での生活ぶりとは一変した穏やかなひとときを過ごしていたようだ。

現在は温泉施設だけでなく、ふたりが来たことを伝える資料館やふたりの銅像などもある一方で、谷の雰囲気は当時の面影を静かに伝えている。また、旧道となる坂道が施設裏にあり、龍馬はこの坂道を行き来して、ここから高千穂峰登山などで出かけて行った。

この後、龍馬は再び京都において大仕事をすることになるが、この霧島での約1ヶ月の休息がおそらく龍馬の人生において最後の憩いであったことは、後の歴史が教えてくれるだろう。